ひきこもる人々。彼らの多くは自ら望んでひきこもっているのではありません。ひきこもりは、違う世界に生きる人々の問題ではなく、私達社会全体が考えていかなければならない問題です。ひきこもりを生んでいる環境は、私達の「顔」を鏡に映した姿であると言えます。
斎藤環氏によるひきこもりの調査
1989年に斎藤環氏が行った統計調査。
調査対象・・・1983年1月から1988年12月までの6年間に受診した患者のうち、次の条件を充たす者
・スキゾフレニア、躁鬱病、器質性精神病などの基礎疾患がないこと
・初診時点で3ヶ月以上の無気力・引きこもり状態があること
・1989年6月の時点で、本人との治療関係が6ヶ月以上続いていること
・少なくとも本人が5回以上来院していること
・評価表を記入するための資料が充分に揃っていること
これらの条件を充たしたものは、全80例(男性66例、女性14例)
初診時の年齢は最年少の12歳から最年長の34歳までで、平均19.6歳
調査時の年齢は13歳から37歳までで平均21.8歳
調査結果
・調査時の平均引きこもり期間は、39ヶ月(3年3ヶ月)。もっとも長期の者は168ヶ月(14年間)におよぶ
・はじめて診察を受けた時点で「ほとんど外出しないか、時に近所まで出かける程度」の人は67パーセント
・圧倒的に男性に多い
・とりわけ長男の比率が高く、第一子の割合は60パーセント
・最初に問題が起こる年齢は、平均15.5歳
・最初のきっかけとしては、「不登校」が68.8パーセントともっとも多い
・不登校者のうち、3ヶ月以上の持続的不登校は86パーセントを占める
・調査の時点で、交際している友人の数が1人もしくはまったくいない人は41パーセントだった
・友人関係がある者も、頻繁に連絡を取ったりなどの親密な関係にあるものは23パーセントにすぎない
・異性との交際経験がまったくない者は78パーセントに達する
・自己臭、赤面恐怖を含む対人恐怖症状は67パーセント
・不眠のため睡眠薬の使用を必要とした人は68パーセント
・昼夜逆転傾向がみられた人が81パーセント
・家族の話し相手が限られているか、まったく会話がないケースは60パーセント
・家族への攻撃的態度と依存的・退行的態度が交互に認められる「家族関係の不安定さ」を抱えた者は44パーセント
・親に対する依存的態度、幼児的振舞いが確認された事例は36パーセント
・家族への攻撃性は、一時的に確認されたものも含めると62パーセント
・家庭内暴力は、一過性のものも含めると51パーセント
・幻覚・妄想体験をした者は20パーセント
・慢性的に気分の変動が激しい者が31パーセント、軽度の抑うつ状態がみられた者が59パーセント
・絶望感・希死念慮、罪悪感は軽度の者も含め53パーセントが経験
・自殺企図は46パーセント、実際に自傷、自殺未遂経験のある者は14パーセント
・シンナーやブロンなどを常用する薬物嗜癖は、慢性的な者が6パーセント、一度でも経験がある者を含めると18パーセント
・事例がひきこもり状態に至るきっかけについて、「不明」が39パーセント、「家族以外の対人関係の問題」が38パーセント、「学業上の挫折体験」が18パーセント、「就学環境の変化」が10パーセント
・家庭は中流以上で、離婚や単身赴任などの特殊な事情はむしろ少ない
